独立国家の作り方
読了目安 7分

香港、チャーターシティ、CHAZ

2020年6月、コロナウィルスの猛威が一瞬減速しかけ、#BlackLivesMatter に関連するデモと望まぬ暴動が世界各位で起きている。それらの話題に並行して、北京の中国共産党政権は国家安全法を可決し、香港は自治権を失いつつあった。
元Uber役員で、現在はCharter Cities Instituteを率いるMark Lutter(31)は、アメリカ国内にチャーターシティ(憲章都市)を樹立し、香港人を呼び込むアイデアを述べている。


Coinbase元CTOのBalajiも「新しい街の作り方」と称してリモートワークとVRに触れていた。

#BLM の暴動の余波でシアトルのCapitol Hill地区から警察がいなくなった。それを聞きつけた人々は地区にバリケードを張り、自治を宣言した。これをCHAZ - Capitol Hill Autonomous Zoneと呼ぶ。他にもテネシー州ナッシュビルと、ノースカロライナ州アッシュビルにも自治区ができたらしい。以下に現地人によるCHAZのリポートを貼っておく。

これは要するに「当初の目的を忘れかけ、お金のある白人が強くなるかもしれない」という状況にあるということが書いてある。これは自治に纏わる工夫の弱さに起因するのだが、シアトル市長はリベラルであるからこそCHAZの政治的スタンスに好意的であるし、自然発生的なタックスヘイブンとして市財政に恩恵が出るであろうから、しばらく生きながらえるだろう。
この通り、シアトル市長はCHAZに命令はしない。


これらの事象に触発されて、もう少し法的で現実的な自治の手順をここに付記しておく。


マイクロネーションにはなくて、独立国家にはあるもの

マイクロネーションという概念がある。その殆どは「これって勝手に言ってるだけで、国じゃないよね?」と思いたくなるものばかりだ。

では、何が足りないのだろう。その答えは「自治権」だ。

自治権の何たるか、そしてどうすればそれが手に入るのかを説明しよう。


自治権の手に入れ方

以下の手順を踏めば自治権を得られ、独立国家たりえる。

  1. 皆すこぶる面倒くさくあれ
  • イスラム自治区の自治権を侵害すると世界中の同じ信仰を持つ人々が黙っていないので手出しされにくい
  • SNS等での発言力の強い人々で構成される自治区は、自治権を侵害してくる隣国の世論に影響力が強く厄介なので手出しされにくい
  1. 世界に「我々の自己決定権」を認めさせろ
  • 国際法における「民族の自己決定権」が認められる共同体は国家である。
  • このご時世において独立国家の条件に「民族の」と但し書く必要性がなく、時代遅れの国際コンセンサスであると言える。
  • 人種的マイノリティの寄せ集めやLGBTQで構成される国であろうとも、多様性そのものが民族的なものと等しく扱われるべきである。
  • 「集団の自己決定権」つまり民意さえあれば、歴史など関係なく独立国家の要件を満たすのだ。
  1. 我々の法で旅人を裁け
  • 隣国からの訪問者が自国の法体系に違反したならば、原則的に自国の法で裁かねばならない。
  • 例外的に隣国に引き渡すにしても、交換条件を引き出すべきである。
  • 1978年、シーランド公国のクーデター時に謀反者アッヘンバッハをドイツに引き渡したシーランド公国ベーツ公は、引き渡しを飲んだ条件は「ドイツの爵位」であった。交渉してくれたことそのものが国家としての格を上げるために、何が何でも交渉に持ち込むべきである。
  • それらができないならば、隣国の住民がどれだけ自国の法を破ろうとも裁くことはできず、次なる訪問者への抑止にならない。独立した法体系の成立には、自国領土内での身体拘束ルールについての「有無を言わせなさ」が欠かせない。