法と民意による2-way binding
『法の支配』とは、判例法主義に基づいて裁判官立法により矛盾した立法府による法令や腐敗した行政を統率する制度設計のことである。これは民意を反映させる経路が代議士を介してしか存在しない時代ならではの欠点がある。
今後、情報技術の進歩により、政府や代議士を介さずに行政を設立・削除・奨励・懲罰できる制度設計が可能になる。 その具体的な例が +DAO4N (DAO for Nations) である。
このときの権力制御機構は法のみでなく民意も使用できる。具体的には、スマートコントラクトに対して市民が罷免提案を出すと、罷免処理に一切の中間的行政手続きが挟まることなく行政罷免が執行される。これを「法の支配」の拡張として「法と民意による2-way binding」と呼ぶこととする。
ソフトウェア工学的にこの構造と相似なもの挙げると、”Functional Reactive Programming” にしばしば内包される “1-way data-binding” がある。アニメーションは苦手だが、プログラムを複雑化させない性質がある。これに対して(具体的な製品名で恐縮だが)AngularJSやSvelteは “2-way data-binding” であり、アニメーションなどの柔軟な処理に向くが、プログラムが複雑化しやすい。
言い換えれば、DAO4Nの民意に基づいた法改正や法のリファクタリングは、安全でパワフルだが、ややプロセスの分かり難さは増すだろう。しかし、現行の制度設計は1-way data-bindingに例えられるものの全く法体系が整理されていないという意味で、下の下である。なぜなら、民意に基づかない法のリファクタリングはニュアンスの変化や判例との矛盾、恣意的な仕掛けのリスクなどがあり、全くリファクタリングが進まないからである。
このようにソフトウェア工学の知見で制度設計を整理する学問領域を "Computational Political Science" と呼ぶこととする。
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