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🔌life/death art-final

私たちに残された行為はただ一つ，ゲーム機本体の電源を落とすことである．

水野勝仁（甲南女子大学文学部メディア表現学科）

作成： 2023年3月7日 9:34 　修正： 2023年3月25日 23:11

「「認知者」としての作品──エキソニモのUN-DEAD-LINK展を事例に」で考えたこと

──エキソニモはもともと，過去作品をヴァージョンアップしたり，そこから別の作品に派生させてきたので，その流れのなかで，今回は作品という単体ではない過去の残骸（UN-DEAD-LINK）を様々なかたちでよみがえらせたということですね．これらを作品と見なす，しかもこれまでとは違う作品，ということでしょうか？

赤岩　そこははっきりとは言えないですね．それこそ中間にあるという状態ですね．見る人の体験によっても見え方が変わってきちゃうので．今回若い人からの反応がすごい多いんですけど．なんかピンときたみたいな．なんかしらつかんでいる感じなんですよ．p. 172

エキソニモ・四方幸子，2020「「Interview with EXONEMO　技術を単語として，新しい詩を書いている　聞き手＝四方幸子」，『美術手帖』2020年12月号

エキソニモがUN-DEAD-LINK展で，初期のインターネットアート作品から「インタラクション」を切り落として展示したことの意味を，キャサリン・N・ヘイルズの「認知者」という概念から考察した．

「非意識的認知」で処理される膨大な量の情報にリンクする「認知者」として作品を展示することは，インタラクションに基づいた「意識のモード」中心主義的なメディアアートへの批判に他ならない．この批判は，メディアアートやインターネットアートの作品を「認知者」として解釈し直すことを求めている．pp. 36-37

水野勝仁「「認知者」としての作品――エキソニモのUN-DEAD-LINK展を事例に」

認知の三層構造

認知はプロセスである：これは，認知は知性のような属性ではなく，環境のなかでダイナミックに展開され，その活動が違いを生み出すものであることを意味する．例えば，コンピュータのアルゴリズムは紙の上に命令として書かれているが，それ自体は認知ではなく，その命令セットを理解して実行できるプラットフォームでインスタンス化されてはじめてプロセスとなる．それは情報を解釈することであり，解釈には選択が必要である．解釈が機能するためには複数の選択肢がなければならない． p. 25

Hayles, N. Katherine. How We Think: Digital Media and Contemporary Technogenesis. Kindle edition.

User-uploaded image: IMG_D4591B122E50-1.jpeg

Hayles, N. Katherine. How We Think: Digital Media and Contemporary Technogenesis. Kindle edition. p. 55

意識のモード

意識と無意識とで構成されており，私たちが通常想定する「意識」

非意識的認知

認知の三層構造の中間層となって，外界と意識とを繋ぐ役割を果たす

非意識的認知は意識的な語りの作話から解放され，身体や外界で実際に起こっていることに近いものであり，その意味で意識よりも現実に近いものである．これは三層構造の枠組みの中で広い中間層を構成している（Hayles，p. 27）

コンピュータの情報処理は「非意識的認知」に該当する

物質的プロセス

認知的活動が生まれる土台となるが，認知プロセスそのものから切り離されているとされる

物質の配置によって認知プロセスに寄与しているのではないか？

認知者と認知的集合体

認知者（Cognizer）

ヒトを含む生物とコンピュータ（技術的認知者）

計算メディアは単なるもうひとつのテクノロジーではない．それらは本質的に認知的なテクノロジーであり，それゆえに，本質的に認知的な種であるホモ・サピエンスと特別な関係を持っているのである（Hayles，p. 34）

非認知者（Noncognizers）

物質や無生物

認知的集合体

ヒトとコンピュータとが結びついたもの．コンピュータとコンピュータとが結ぶついたインターネットなど

インターネットなどのシステムレベルで「非意識的認知」はより大きな意味を持つようになってきている

認知者とメディアアート

電源が入っていないメディアアート作品

アルゴリズムが情報を処理できないため，作品を「認知者」と考えると「死」に近い

電源が入っているメディアアート作品

作品が「認知者」として「生」の状態になる

ハードウェアとソフトウェア，そして，ヒトという認知的集合体において作品が機能する