オカリーナ入門 [itecist]

はじめの一歩

 はじめまして、オカリーナ奏者の岸本みゆうです。この本のタイトルに[itecist](「アイテキスト」と読んでください。)と書いてあるのは、「この本を使いたい人は自由に無料で使っていいですよ。」というしるしです。ただし、この本は現在の著者、岸本みゆうに無断で印刷して売って、利益を得る事は認めません。詳しくは、fSeven [itecist] シリーズについてに書きましたので、気になる方は、読んでください。
 “超”入門というのは、まだオカリーナを吹いていない人にも、もう何年もオカリーナを吹いている人にも、これが共通の入門書として、いつでも、誰にでも役に立つようにとの願いが込められています。
 オカリーナを吹くことも触るのも初めてという方は、ぼくにおそるおそる「楽譜が読めません。」「音痴です。」「音楽(楽器)をやったことがありません。」などと告白してくださる方がいます。安心してください。大歓迎です。どんな方にでもこの本は役に立つでしょう。ただし、その告白は一度だけにしてください。2回めからは、その言葉は、「私は楽譜は読めません。」「音痴は治りません。」「音楽(楽器)は上達しません。」という宣言を自分自身にすることになります。その呪縛でしかない宣言は必要ありません。

オカリーナについて

 オカリーナは、1850年ころ、イタリアのジュゼッペ・ドナーティ(Giuseppe Donati)さんという方が考案した陶器でできた楽器です。イタリア語の「鵞鳥(オカ=oca)」と、「可愛い(カリーナ=carina)」という言葉を組み合わせて作られました。日本では「オカリナ」と呼ぶこともあります。
 ヨーロッパでは、多くの地域で、赤茶色をした粘土を固めて焼いて、建物の壁のレンガにしたり、舗道に敷き詰めたりする風習、文化があります。この粘土や焼き物をイタリア語で「テラコッタ(terra cotta)」といいます。日本でもレンガや植木鉢などに使われているので、目にする機会はあると思います。
 オカリーナは、テラコッタで中を空洞にして笛を作り、10個ほどの穴を開けて素焼きにしたもので、今でもイタリアではテラコッタでオカリーナを作っています。
 ドナーティさんがオカリーナを考案するより前にも土や陶器で作られた笛、「土笛(つちぶえ)」はありました。玩具や祭器(さいき)としての土笛の起源は諸説あり、紀元前のはるか前に中南米で生まれ、世界中に広まったのではないかという説が最も有力です。
 日本にも鳩笛というものがあります。おそらく土笛は、世界のどこか1箇所だけで生まれたのではなく、自然の中で生まれた風の音や波の音、鳥の鳴き声をお手本に、石や木や土などの材料でさまざまな場所で、自然に生まれたのではないでしょうか。

オカリーナの種類

 オカリーナには、いろいろな大きさの違う楽器があります。ハ長調のドレミで演奏できる楽器をC管(シー・かん)の楽器と呼びます。オカリーナの音域は1オクターブ半くらいと狭く、C管の楽器だけでは音域の狭さを補うことができないので、ハ長調以外の調のドレミを持つ楽器が作られています。オカリーナの場合は、C管以外にF管、G管がよく使われています。この3つ以外には、D管、B♭管なども作られています。それぞれにオクターブ高い(低い)楽器があります。
 一般によく使われ、初心者にお勧めするのは、アルトC管、ソプラノF管です。
 また、音域の異なる2つから4つの管が、ひとつになった複数管の楽器も作られています。2つの管がひとつになったダブル、3つの管がひとつになったトリプルなどがあり、ダブレット、トリプレットなどということがあります。管が増えると、音域が広がり、演奏できる曲が増えます。

吹きかた

 オカリーナの本体から煙突のように突き出しているのが吹き口ですこの吹き口から息を吹き込めば、音が出ます。吹き口には、細く平たい、小さな穴があいています。息がそのまま細く平たく、少しずつ出ていくように作られているからです。
 本体には10個くらいの穴があいています。これは指で押さえるための指穴です。穴を押さえたり、離したりすることで「音程(トーン)」が変えられるので、トーンホールと呼ぶこともあります。
 オカリーナを吹くときは、左手は手のひらや指先が自分の顔の方を向きます。右手はその反対に手のひらや指先が前を向きます。指先で1個ずつ穴をとじて、10個の穴を閉じたときに「ド」の音が出ます。右手の小指から順番に穴を開くとドレミの音階が吹けます。ただし、左手の小指は穴をふさいだままにしておきます。
 下の楽譜は、左から順に「ミファソラシドレ」という音のつながりになっています。私の教室では、毎回全員でこのような音階を吹いて、息と音程を確かめます。
 この後は、もう一度、最初のミの音を確認します。このあたりの息遣いが他の音を吹くときにも基準になります。ミーレードーと、低い音を確認します。低いドの音はなかなか出ませんし、二人以上で吹くと音程がなかなか合いません。それより低い音はなおさらです。

ロングトーン

 練習方法のひとつとして、一つ一つの音を長く伸ばすことを「ロングトーン」と言います。これは、歌を歌うときに行う「発声練習」と同じ意味を持ちます。メロディを吹くときに、ひとつの節(フレーズ)の長さは、いろいろですが、息を一定の強さと長さで保てれば、節(フレーズ)の途中で何度も息を吸わなくて済みます。伸びやかな音は、オカリーナの魅力のひとつです。
 ロングトーンの練習をするときに、ただ長さだけに注目するのではなく、音のさまざまな表情や、音色、音程などを注意深く聞いて行うことが重要です。

タンギング

 「フー、フー」と吹くと、音は「ホー、ホー」と聞こえます。また最初の「フー」とふたつ目の「フー」のあいだは、息が途切れることになります。息が浅い人は、この息が途切れたところで再び息を吸うことがあります。最初のうちは、このように吹いて構いません。
 タンギングの練習は、一つ一つの音をじゅうぶんに長く伸ばせるようになってから、練習するようにしてください。一つの音の長さは、ゆっくりメトロノームで80くらいのテンポで、8拍を目安に伸ばすといいでしょう。舌を使って、音の始まりを

スラー、タイ

腹式呼吸

 腹式呼吸と聞いただけで、難しい特殊な呼吸法だと思っている方がいます。夜、眠っている人のおなかが膨らんだり、小さくなるのを見たことがあると思います。決してお腹に空気が入るわけではありません。腹式呼吸の場合も、肺で呼吸します。当たり前ですね。
 眠っているときは、上体が固定されて全身の力が完全に抜けているので、何もしなくても腹式呼吸のような呼吸ができているわけです。ここで、腹式呼吸「のような」呼吸と言ったのには、理由があります。眠っているときは、コントロールしてそれができているわけではありません。腹式呼吸は、この呼吸を意識してコントロールすることに意味があります。
 腹式呼吸に対して、胸式呼吸ということがあります。ヒトの日常活動時の呼吸は、非常に浅い胸式呼吸です。何もなければ、深い呼吸や腹式呼吸を必要としないからです。胸式呼吸というのは、意識することなく(無意識に、自発的に)、肺が収縮を繰り返し呼吸をしています。これはもちろん、生命維持のための呼吸です。
 激しい運動をしたあとなどには、さらに深い呼吸を必要とします。そのときには、ヒトは、肋骨を広げて、肩を上げ下げして呼吸します。いわゆる深呼吸ですが、このときも胸式呼吸です。動物はすべて、内臓を守る動きをします。そのため、運動時には、おなかを含め、内臓に負担にかけないような呼吸をするのです。それが自然なのです。
 さて、肺とおなかを隔てているのは、胸膜であり、腹膜、横隔膜であり、それを支えている筋肉群です。胸膜の中は水で満たされています。これを胸水と言います。この胸膜と胸水のお陰で負担を感じることなく、肺が収縮できるのです。
 肺を風船に喩えると、風船が大きくなったりしぼんだりする呼吸が、胸式呼吸です。これは、胸膜や胸水の容量に制限され、深く呼吸をする必要があるときには、肩を上げ下げすることによって、肋骨を広げたり縮めたりする必要があります。腹式呼吸というのは、この胸膜、胸水に加え肋骨の開閉による胸式呼吸ではなく、腹膜、横隔膜、その周辺の筋肉を使った呼吸を言います。
 これまでの話で、腹式呼吸というのは肺の収縮ではなく、下方向に肺の容積を増やす呼吸なのだと理解できた方がいるでしょうか。これも、なかなかイメージできません。なぜなら、腹膜、横隔膜はコントロールできないからです。コントロールできないものを、どうするのだということですよね。もうおわかりと思いますが、腹部の内臓を支えている筋肉群を使うのです。
 この筋肉群のトレーニングが必要だという考え方もありますが、最初に述べたように、実は誰でも眠っている時にはできているのが腹式呼吸です。あとは、どうコントロールするか、その必要性を意識することです。
 その意識付けのために、私は、湯船につかって胸と腹に手を当てて、湯気を吸いこむように鼻で呼吸をすることを勧めています。また、夜布団に入り、仰向けになって体を伸ばした状態から、同じように胸と腹に手を当てて、あたかもそこに美しくいい香りの花があるようなイメージで、無理なくゆったりと深い呼吸をすることを勧めています。

練習曲

 これは、2016年1月に作った練習曲です。ホ短調のメロディで、低いシの音を正確に出せるかどうか、またフレーズ間の間合いも重要です。

高い音の練習曲

 オカリーナの初心者の方は、高い音が苦手です。この練習曲で、オカリーナの魅力である高い音を克服してほしい。2012年10月22日に作りました。

休符から始める

 この練習曲には「休符から始める」というタイトルをつけました。タイトルに反して曲の最初は休符ではありません。途中のフレーズがさまざまな休符で始まっています。