大きな国を安全にDAOにするには

あらすじ

+カタルーニャ人のDAO4Nの捉え方 にあるように、独立希望者にユーザーインタビューを実施した。その結果、最大の障壁は「カタルーニャの年歳入が4.2兆円あり、『カタルーニャDAO』がハニーポットになってしまうのではないか」という懸念であった。

■ 4.2兆円が乗るブロックチェーンを研究する


「今のEthereum上で4.2兆円の年間納税が起こっている」ということは、必ずしも危険なのだろうか。
Graph Protocol によれば、2020年10月16日のUniswapのtotalVolumeUSDは $25B であり、約3兆円に匹敵する。つまり、時間をかけて流通する分には今でも取り扱いは可能なのだ。

■ どうすれば安全なのか?

4.2兆円の時価総額を持つトークンがEthereum上に存在しない。USDTで1.6兆円である。ステーブルコインのような仕組みを用いると、その国家全体のリスクがそこに集中することになるので、最も重要なポイントだ。なるべく多くの金融機関が分散してステーブルコインを発行すべきだし、新国家の域内でそれらの金融機関を運営して他国の介入を避けるべきだ。

次に、二重支払いだ。ある価値が着金した後にトランザクションをreorgすることで、商品を得たのちにトランザクションをなかったことにする不正である。ステーブルコインの出金が最も狙われやすいが、出金制限をかけることで攻撃期待値を制御できる。

最後に、価値の交換だ。新国家の新通貨をいかにして流通させるか、そのインフラは安全かということである。基本的にはICOのように新通貨をxEUROなどのステーブルコインで固定レートで購入することになる。新通貨が安いなら固定レートではなくUniswap等買っても良い。新通貨が高いなら固定レートで買えばいい。時間が経ち、新国家が安定すれば、固定レートを廃止して自由化すると良い。

■ 空売り攻撃

Q. 流通しているETHの時価総額よりも遥かに高い時価総額の通貨が多数並ぶことになるが、それはなぜなのだろうか?それは本質的に安全なのだろうか?
A. 「空売り+51%攻撃」を行う余地がある。詳細は後述する私の2018年4月の論考を参照。

ETH以外のトークンの時価総額が高まりすぎると、ネットワークを麻痺させて空売りを行うことで利益が上がりうる。空売り利益と51%攻撃のコストの兼ね合いが重要。

Vitalikがコメントしている内容を踏まえてより簡易に表現すると、51%攻撃をしてもあるトークンの価値が下がらないならば、安全であると言える。


■ 総論: 意外と安全

どんなに年歳入が大きい国家であろうと、その国家の立ち上がり期における資産既存を狙った攻撃余地は存在しない。

新通貨がDeFiの中で極めて大きな意味を持ち、ナラティブが引っ張られてしまうだろうが、それは致し方ない。





参考文献