デザインと空間
東北大学工学教育院科目 デザインとエンジニアリング 2022年度 第4回
2024年11月18日(月)
本江 正茂(もとえ まさしげ) 建築・社会環境工学科 准教授/宮城大学 事業構想学群 教授
motoe@tohoku.ac.jp

人間中心のデザイン Human Centered Design

MRIスキャナーのリデザイン[ケリー]
  • MRIは侵襲なしで体内を見られる素晴らしいテクノロジーの成果
  • しかし、子供が音を怖がるので、結局麻酔を使っているという実態
  • 子供の冒険物語の表現→「明日もこれに乗れるの?」
技術的要件、経済的要件、人的要件、三者のバランスのうえにイノベーションがある。

機械との競争

  • 見える仕事の機械化。目の前から人がいなくなる。
  • 機械には(まだ)できない仕事? 創造的な仕事と肉体労働?[ブリニョルフソン]
  • あなたの専門技術はなんですか? それは機械で代替できませんか?[野村総研]

技術としての設計

技術教育の中での「設計」の位置づけ: 建築を例として
  • 実験: 実世界から情報をとりだす行為
  • 体系化された技術を学び、設計で統合する。その反復で次第に高度になるというカリキュラム

技術的解決としての設計 vs 対話としての設計

  • デザイナーは、新たな情報を投げ込んで、「対話」を通じて問題の枠組みを更新しつつ、同時に解を求めるフィードバック・プロセスを進まなければならない。
意地悪な問題 wicked problem[Rittel, 1973]
  • おとなしい問題(tame problem)に対して
  • 明確に定式化 (naming)できない
  • 問題の定式化は解についての考え方から決まってくる
  • 終了規則をもたない
  • 解について言えるのは、良いか悪いかである
  • 問題を解く手続きの完全リストは存在しない
  • 問題にはいくつもの説明が可能である
  • すべての問題は他の問題の徴候とみなしうる
  • すべての問題はユニークである
  • しかし、責任はもたなければならない
  • デザインに必要な情報があらかじめ十分に与えられることはない。
  • 情報は大量にあるが、十分にあるわけではなく、欠損している。
  • 飛躍を伴う仮説によって埋めなければならない。→ cf. MRIを海賊船に見立てる
  • 課題を解決するためには、枠組みを広げなくてはならない。
  • 枠組みを広げるためには、枠組みの中に閉じこもっていることはできない。
  • 環境に働きかけ、情報を獲得しなくてはならない。
デザイン思考プロセス
  • 初期課題設定からスタート
  • 「現実を知る/未来を作る」と「抽象/具体」の間を振幅
  • リサーチ、分析、統合/課題再定義、プロトタイピングを反復
  • 単純なループではなく、逆回転したりジャンプしたりする
暗黙知と形式知
  • tacit knowledge, explicit knowledge[ポランニー]
  • 説明できないけど、わかること。一輪車、自転車、水泳 etc
  • 創意は暗黙知として生じる。
  • SECIモデル[野中]暗黙知と形式知の転換を通じて知識が創造される。