現実と地続きな民主主義の改善

スイスの国民発議

人口854万人(2018)のスイス連邦は10万人(1.17%)の署名を18ヶ月以内に集めると国民発議という立法プロセスを開始できる。

スイスの国民発議の利点と欠点

利点
  • 代議士不要
  • 同時審議可能数の爆発的増加
欠点
  • 署名の偽造の可能性がある
  • 投票行為を安全で効率的な方法で行う困難
  • 国民全員で審議する際の処理可能な法案数の限界
  • 熟議の不在
  • アジテーション耐性の低さ
  • マイノリティの人権担保
  • 美人投票
  • ポピュリズム

解決策: 審議による意見投票

審議による意見投票(Deliberative Optinion Poll)とはJames Fiskinによって考案された熟議による公正な憲法改正手法である。
国民からランダムに審議員を抽選し、ファシリテーターと専門家を議会に呼び、数日間議論を行い、最後に投票する。

審議による意見投票の利点と欠点

利点
  • 統計的に有意な数の審議員のみが法案審議に参加すれば良い
  • 専門家やファシリテーターとの対話を確保でき、意見を変えられる心理的安全性がある
欠点
  • 政府が御用学者を審議に登用できる
  • 専門家や審議員をランダムに選ぶに際して、乱数を運営(政府)が恣意的に決定できてはいけない。
  • 2021年現在、制度として継続運用するためのノウハウや予算感が整理・公開されていない

つまり
  • システムとして安全で予算ややり方が明確なら「審議による意見投票」を実現できる


解決策: ETH2.0 VDF (政府にも改ざんできない乱数)

このVDF乱数はETH2.0において標準装備されており、任意の国家は法令で「審議による意見投票の開催が決定した日の最後のブロックから得られる乱数によって審議員を選出する」という風に決めておくことで安全な乱数を使用できる。

乱数の安全性について: +開発者のためのVDF乱数の説明 

抽選制の課題: 脅迫

上記の抽選制の民主的手続きは、マイナンバー(実名と紐付いた国民ID)を索引として乱数で国民を選出することを想定しており、乱数は公開されるので「マイナンバーDBを持つ人にとっては審議員が誰なのかわかる」と言える。よって政府のような強力な主体に対して脅迫耐性がないと言える。これは2021年の香港やベラルーシやミャンマーのような環境において民主主義を維持できない制度設計であることを意味する。


いかに脅迫耐性を得るか

前提として、Starlinkのような衛星インターネットとAndroidのような安価なスマートフォンが国民すべてに行き渡っており、義務教育や生涯学習を通じてそれらを扱えるだけのリテラシーがあることとする。

ユーザーはアプリから匿名のEthereumアドレスを作成する。このアプリで「本人確認」をする。確認業務は民主的な市民に信任された団体が行う。