5 身体と空間(2) 意味や価値は世界のどこにあるのか? Body and Space(2) Where in the world are values and meanings?

建築ITコミュニケーションデザイン論 第5回:

本江正茂
  • 2024/05/29 (wed)

拡張する身体 Human Enhancement

サイボーグと身体 Cyborg and Body
テレビ番組「NHKスペシャル 立花隆 ヒトはどこへ行くのか」(NHK, 2005)を見つつ。
  • 脳は機械に合わせて進化する 人工内耳 artificial ear
  • 脳が機械で調整される パーキンソン病 Parkinson desease
  • 人工内耳には聴覚障害者自身からの反対意見がある。

  • 「それは、聞こえるあなたのエゴです。聞こえる方がいいと思っているんですか。」
  • 耳が聞こえないことは不幸なことである、と無批判に前提してしまっていないか。
  • 子供に人工内耳をつける場合、その子の主体性を損ねることになっていないか。つまりパターナリズムではないか。
  • ヘアドネーション批判と同型。
  • 遺伝性難聴に対する遺伝子治療についても、人工内耳と同様に、親が決めていいのか、という議論が起きているようだ。
  • 聴覚障害者の健康における言語習得の役割を研究し、自身も聴覚障害者であるロチェスター大学の心理学者で公衆衛生研究者のワイアット・ホールは、聴覚障害者の子どもをもつ健聴者の親は、医療介入やテクノロジーを、自分の子どもが自分の知っている世界に適合するための方法と考えているかもしれないと言う。しかしホールは、聴覚障害者は社会の豊かさに貢献していると考えている。「聴覚障害者が地球上に存在する限り、人々は常にわたしたちを治そうとしてきました。わたしたちがまだここにいるという事実は、わたしたちにまだ何らかの固有の進化的価値があり、わたしたちの違いが、わたしたち全員の住む世界に貢献していることを示唆しているのです。

  • 映画「サウンド・オブ・メタル」(2021, Amazon)も聴覚喪失を扱った映画。人工内耳の聞こえ方を表現したシーンがあるので、ヘッドフォンをして視聴しよう。

拡張する身体 Human Enhancement
  • 「増進的介入」で「幸福を追求」
  • 治療目的でない医学技術の行使 use of medical technology except treatment
  • 睡眠薬、体重減少、毛生え薬、出生調節、脂肪やシワをとる手術、腿を細くする手術、豊胸手術、歯列矯正、出生児の性選択。ほか、ドーピング、割礼、美容整形など
  • 遺伝子選別、胚診断、性選択、子供の行為改善
  • 筋肉の大きさと強度の増強、運動成果の強化、
  • 老化の遅延
  • 苦痛の記憶の鈍化、気分を明るくすること

Question

  • 「身体」が人工的に拡張されうるとき、人間と環境との関係はどう変わるか? 
  • How will the relationship between humans and the environment change when "body" is expanded?
  • 人間と環境の関係をどのような水準でとらえたらよいのか? 
  • What level should we grasp the relationship between humans and the environment?
  • 知覚がソフトウェア次第なら、世界はどのようにあるのか? 
  • If perception is up to software, How does the world exist?

意味や価値は世界のどこにあるのか? 

Where in the world are values and meanings?


存在論から認識論へ。
近代科学的唯物論 Modern scientific materialism=世界は物質の配列にすぎない。
→物質それ自体には感性も価値も目的もない。つまり意味がない。
→意味や価値は「精神の世界」に生じる。物質の世界と精神の世界の分裂。

アリストテレス(自然の意味は存在しており、知覚される) vs
  • ガリレオ(知覚的に把握されるのではなく、知性によってのみ理解される性質)
  • デカルト(「精神的洞察」知性によって捉えられる「幾何学的延長」)