📃インタラクションにおける映像の物質的質感

ISSEY MIYAKE 「DOUGH DOUGH」のWEBページが示す「マテリアル」

水野勝仁（甲南女子大学文学部メディア表現学科）

🤲DOUGH DOUGHとともにクシャクシャになるWEBページ？

🖐手がかたちをつくる

でで発表した「DOUGH DOUGH」は，「ねじる，丸める，揉む，折る，伸ばす───パン生地（dough）のように好みの形へと変化させ”自遊”自在に楽しむことのできる布」である．

特殊な形状記憶機能を持つ糸を織り込んだ「一枚の布」は，手でくしゃくしゃとかたち作ると立体的な形が保たれる仕組みです．

【インタビュー】宮前義之率いるイッセイミヤケ，「一枚の布」の概念のもと進化するものづくり

🌫布のような質感を持った「DOUGH DOUGH」のウェブサイト

SPRING SUMMER 2019 | ISSEY MIYAKE

This is the seasonal special site for ISSEY MIYAKE.

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ウェブサイトと映像をディレクションしたコンピューテショナルアーティストの橋本麦はサイト制作の狙いを「クシャクシャっとしたら，その形状がキープされる生地のブランドサイトだったので，WEBページ自体が自己言及的にクシャクシャなったら面白いだろうと着想しました」と述べている．

橋本麦さん「表現って出つくした」って思いますか？映像制作からR&Dへ | NEWREEL

映像作家として、またはプログラムも取り入れた映像制作をするコンピューテショナルアーティストとして活躍する橋本麦。昨年はお餅を祖父母の自宅でトランスフォームさせまくったストップモーション・アニメーションMV「Fly」が話題となった。最近は北海道に拠点を移し、新しい取り組みをしているという。

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橋本麦さん「表現って出つくした」って思いますか？映像制作からR&Dへ | NEWREEL • newreel.jp

🧐問題提起

WEBページも「ページ」であるとすればクシャクシャになってもいいはずである．しかし，通常のWEBページはクシャクシャにはならない．では，くしゃくしゃになる「一枚の布」＝DOUGH DOUGH経由で，WEBページがクシャクシャになるのはなぜなのか？

🌊「流動的」で「物質以上に物質的な何か」としての「波自体というマテリアル」

📖皺一つつかない「ページ」というオブジェクトの誕生とその先

デジタルとフィジカルとを明確に分ける

ニューメディアのオブジェクトは，アルゴリズムに基づいた操作をしやすい．たとえば，適切なアルゴリズムを適用すれば，写真から自動的に「ノイズ」を取り除いたり，コンストラストを改善したり，さまざまな形状の境目を突き止めたり，比率を変えたりすることができる．要するに，メディアがプログラム可能になるのである．p.70

文化的インターフェースは，私たちが「ページというインターフェース」になじんでいることを当てにしつつ，その定義を拡張して，コンピュータが可能にした新たな概念を含めようとする．1984年，アップルはグラフィカル・ユーザー・インターフェースを導入して，互いが隠れるように積まれた，重なり合うウィンドウ───本質的には，本のページの集合───にデータを提示した．ユーザーはページとページの間を行ったり来たりするほか，個々のページ内をスクロールできた．こうして，伝統的なページはヴァーチャルなページとして定義し直されて，コンピュータ画面の限られた表面よりもずっと大きいこともあるような表面となるのである．p.130

レフ・マノヴィッチ『ニューメディアの言語』，2001年

WEBページは「ページ」という概念をヴァーチャルな「ページ」として定義し直されて，マノヴィッチが「ニューメディアのオブジェクト」と呼ぶ，コンピュータが可能にしたあらたな存在になっている．

ヴァーチャルな「ページ」は制御可能なオブジェクトして定義されて，「皺がつかない」というあたらしい性質を得て，皺一つつけることなくスクロール可能になっている．もちろん，皺一つなくめくることもできる．「ページ」だけでなく，その上に配置されている「テキスト」「画像」というすべての表象もまた制御可能なオブジェクトになっている．さらには，「スクロール」というヒトの行為もまたインターフェイスに制御可能なオブジェクトとして組み込まれている．

では，マノヴィッチが「ページ」をヴァーチャルなものとして定義し直すことができたのか．インターフェイスを理論的に研究しているマイケル・ワイバーグは，インターフェイスはこれまで「表象中心主義」であったと考えている．そこでは，デジタルとフィジカルとが明確に分けられていて，デジタルはフィジカルを「表象」＝再現するものと考えられてきた．

AppleのiPhoneとiPadでスクロールがどのように実装されているかを見ることで，もうひとつのスキュモーフィズムのデザインの例を見つけることができる．リストの一番上または一番下を超えてスクロールしようとすると，あたかもリストに物理的な力が加わっているかのようにリストが跳ね返る． p.23

マイケル・ワイバーグ『インタラクションのマテリアリティ』，2018年

スキュモーフィズムはデジタルとフィジカルとを明確に分けた上で，デジタルにフィジカルな雰囲気を当てるものとなっている．デジタルとフィジカルとを明確に分けているからこそ，フィジカルなページがデジタルでヴァーチャルな「ページ」としてあらたに定義されることが可能になっているのである．

しかし，ワイバーグは，データと表象とはもともとコンピュータと世界とを橋渡ししてきたと指摘する．データは世界に存在する何かのデータであり，表象もまた世界に存在する何かの表象であり，コンピューティングが独自に生み出すものではない．そして，近年，この橋渡しがモバイルコンピューティングなどでダイレクトになりつつあり，世界のなかで，世界ととともに，世界を通してコンピューティングされるようになってきている，とワイバーグは考えている．デジタルとフィジカルとは明確に分かれたものではなく，デジタルとフィジカルとはデータと表象を用いて，重ね合わされていると言えるだろう．

Appleの「Designing Fluid Interfaces」は，デジタルとフィジカルとの重ね合わせを連続的に変化する「動的なビヘイビア」で表現しようとしている．インターフェイスは単に世界を表象するものではなく，世界の変化の状態とともに変化する流動的で，連続的なものなのである．

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Designing Fluid Interfaces

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Designing Fluid Interfaces

人間の心と体，そして，私たちを取り巻く世界は常に変化の状態にあります．そのためインターフェイスも同様のビヘイビアを期待されます．触覚的になるにつれ，高い忠実性が要求されるのです．インターフェイスではアニメーションが使われてきました．ボタンがタップされると，手綱はデザイナーに渡されます．デザイナーの役割は完璧なアニメーションを作ることです．完成すると手綱はインターフェイスのユーザに戻され，操作が実行されます．いわばアニメーションと操作は時系列に沿って交互に行われるのです．

Fluidインターフェイスでは，デザイナーの手から主導権が離れます．デザイナーは代わりに操作時にどのような動きをするか設計します．そして一連の動的ビヘイビアとして常に有効にするのです．

​​ISSEY MIYAKE 「DOUGH DOUGH」のWEBページが示す「マテリアル」

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​​🖐手がかたちをつくる

​​​🌫​布のような質感を持った「DOUGH DOUGH」のウェブサイト

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