ジャズいつでもアドリブ読本
初版2018.06.10

はじめに

この本は、「音楽はひと通りやってきたけど、これまではただ自分が楽しむだけだった。」「じゃらじゃらアドリブができるまでは望んでいないけど、もうちょっと本格的に、自由にメロディをかっこよく演奏できるようになりたい。」「ちょっとはアドリブに聞こえるような演奏ができたらいいなぁ。」

という方を対象に、どうやったら、アドリブっぽい演奏ができるかを伝授しようと思います。

簡単に著者の略歴

名前:岸本みゆう
中学〜高校の吹奏楽部で、クラリネットを演奏する。高校卒業後、ジャズに目覚め上京。レストランやディスコ、ライブハウスなどでたまにライブをやりながら、バイトに励む日々。飯田ジャズスクールに入り、ジャズピアニストの田村翼氏、サックスの木村勉三氏に師事するほか、たくさんの講師陣に囲まれて悪戦苦闘する日々を過ごす。1989年に帰鳥(きちょう=郷里の鳥取にUターンすること)し、市民吹奏楽団でクラリネットを吹く。現在は、1998年から吹き始めたオカリーナで演奏活動をやっているほか、音楽ライブユニットぽんかん。(「。(マル)」までがユニット名)で、ボーカルの谷口尚美氏の伴奏でギターを弾いている。

ジャズについて

飯田ジャズスクールでは、最初にコード理論を学びました。アナライズの手法を学び、代理コードを使う、あたりまでは理解できていると思います。実践については、月1くらいで都内でライブはやってきたものの、20代の中途で鳥取に帰ってきたので、これを書きながら60代前になって、学び直そう、自分も演奏してみようという無謀な冒険家レベルです。

ぜひ、一緒にステップアップしてみましょう。

理論に惑わされないために

理論を学ぶと、それを理解して覚えないといけないんじゃないかと思ってしまいます。もちろん、覚えて、できるようになることは、ステップアップにつながります。しかし、理論と実践は別物なので、理論と実践がリンクできない方は、いつまでも理論に引っ張られる結果になります。

「ここはドミナントだから、ミクソリディアンで、どのテンションが使えて、その場合、ブルーノート・スケールになって・・・。」

このように、理論で使われる言葉は、日本人にはまったくイメージしにくい言葉ばかりです。これを実践にリンクしないまま、どんどん詰め込んでいる人が多いようです。これは、どこかにたどり着くために、世界地図を広げて、縮尺を少しずつ小さくして、目的地を探すようなものです。5キロ離れた目的地に行くために、シンガポールの電車の乗り方を学ぶことに意味がありますか。

ジャズが難しいと思われているのは、使われるスケールが多彩で、演奏技法もいろいろあるため、ぜんぶ理解することが難しいからです。器用な人は丸暗記でこなしているようですが。

ぼくもかつて「まず、チャーリー・パーカーを聞くといいよ。」と友人に言われて、アドリブをコピーした本や、マイナスワンレコードのようなものも買って、クラリネットでひと通り吹けるように繰り返し練習をしたことがあります。身についたでしょうか?いやいや。楽譜があればできるようにはなっていたと思うけど、どうでしょう。ただ、ジャズのニュアンス的なものは体感できたとは思います。人まねで得られたのは、ぼくの場合は、それだけでした。

1.フェイクとオブリガード

「フェイク」というのは、メロディを少し崩して演奏することをいいます。具体的には、音を変えたり、リズムを変えたりして、ジャズらしいフレーズになるように演奏をします。ほとんど元のメロディがわからないほど、崩されることがあります。